「ダンカン様もいらっしゃ……」

「すまないが、私に近づかないでいただけますかな? あなたのせいでまた恥を掻きたくないので」

「あ……あの時は本当に申し訳ありま」

「今日のパーティーは特に大人しくしたほうがいいですよ。殿下のためにも」

 私に気づいた人たちがひそひそと話を始める。

「どんくさ令嬢のシャーロットよ」「本当だわ。なんでこんなところに」「近づかないほうがいいわよ」

 やはりここに来るのは間違いだった。
 私は皆が言う通りどんくさ令嬢なのに。

「シャーロット。こんなところにいたんだね」

 ユーリ王子が私に気づいて近づいてくると、ダンカン公爵がそれを遮った。

「殿下。彼女に近づいてはいけません。ろくなことになりませんよ。私も何度も彼女に恥を掻かされたか」

「ろくなことにならない? 私が彼女を誘ったんだ。すまないが、通してくれないか?」

 ユーリ王子は私の手をとって場所を変えてくれた。

「殿下。ありがとうございます」

「どうってことないよ。それよりも歌についてだ。パーティー開催の挨拶の後に皆に披露してもらいたいんだけど、準備はいいかな」

「は、はい。大丈夫です。殿下」

 王子は小刻みに震える私の肩に優しく触れる。

「大丈夫。きっと上手くいくから」

 そう言うと彼は広間の真ん中に立ち、大勢の前で挨拶を始めた。

「お集まりの皆。私のために集まってくれて嬉しい限りだ。今宵は思う存分楽しんでほしい。さて、開催に伴って皆に素晴らしい歌を披露したい。シャーロット。こちらへ」

「はいいい!!」

 出番がきた。