お父さんの余命が1か月を切った。
私は、お父さんには辛い顔を見せないように精一杯の笑顔で頑張った。
病室を出た時、また涙が押し寄せてきた。バレないようにしないといけないわかっていたけど、涙が止まらなくて、動けなかった。
「ねぇ、大丈夫だよ。泣かないで」
どこかで聞いたセリフ、懐かしい声。
振り向いたけど知らない人だったみたい。
私より少し背の低い穏やかな雰囲気を纏うまだ幼なさも感じられる可愛らしい笑顔。
「おいで、近くだから。僕の部屋。
あやしーもんじゃ無いよ。僕、何もできないしね。」
言われるがままついていった。
彼は名前をおしえてくれた。
彼はにしおかせい。ほしって書いて星。
彼は同じ16歳と言うこともあってすぐに打ち解けた。
しかし、彼は難病持ちの余命宣告された人。いついなくなるかわからない。
お父さんに会うついでといってはなんだが、毎日星と会い沢山のことを話した。いじめられたこと、助けてもらったこと。友達のこと。家族のこと。
たくさんの悲しいこと、楽しかったこと、たくさん話した。
包容力のある彼はなんでも丸く包み込んでくれる気がしたのだ。
そして彼とは“ほしくん”、“もえちゃん”と呼び合う仲になった。

毎日が楽しい。
でも、楽しい日々は長くは続かない。お父さんはもうほとんど目を覚さない。覚ましてもどこか辛そうで、こっちまで辛かった。
そして、ほしくんもだんだんと弱ってきている。私はそんな現実をただ受け入れるしかなかった。

私はこの頃学校生活も充実していた。いじめはいつのまにか終わり、あの不思議な先輩。西岡雲先輩は今では1番の親友で、くもくん、もえと呼び合う仲になった。帰りが一緒になったら寄り道したりもしてほんと楽しい。私はくもくんに感謝していた。あ、このくもくんと言うあだ名をつけたのは私だ。なんか響きが好きで気に入った。そんな軽い理由だ。先輩にはお父さんと弟さんがいるらしい。お母さんはいないんだとか。私は自分の家庭環境が複雑なので深くは聞かないことにした。
体が弱い弟さんは病院に入院しているらしく今度お見舞いに行く約束をした。