家に帰った。
すると今日は休みなんだと喜んでいた父がいなかった。
もしかして、買い物かなにかかな?
すると、一通の電話がかかってきた。私は今までで1番の速さで家を飛び出した。
行き先は病院。
そして告げられたのは、
「お父さんは余命約3か月です。」
は?どう言うこと?
私は理解が追いつかなかった。
あんなに元気だったのに。どうして急に、、。
父には伝えないことにした。伝えてショックを受けたら3か月持たないかも知れないから。隠されていることを知ったらもっと悲しむかも知れないけれども。

「ここのプリント貰ってもいいかな」
私は前の席の女の子に話しかけた。
「、、。」
とうとう回ってきた。私のクラスでは今ロシアンルーレットのいじめがあった。こんなタイミングで来るとは、、。

いじめは壮絶なものだった。短くて1週間長かったら1か月ほどのいじめだ。暴力、暴言、脅迫、落書き、シカト全てのものが一気に押し寄せる。私は精神的に病んでいった。でもいじめだけが原因ではなかった。父の余命宣告、いじめ同時に起きた2つの悲しい出来事に心が壊れ始めた。
お父さんがだんだんと元気がなくなってきた。薬の副作用もキツく相当心身共にやられているらしく、ほとんど寝てばかりの日々が続いてきた。死んじゃうのかな、お父さん。

私はとうとう心が壊れた。
いや、もしかしたらもっと前からボロボロだったのかも知れない。
いじめの恐怖と父の病状、家の家事のこと、沢山の苦痛が一気に押し寄せる。私は教室のドアの取手をもって、開けようとしたのだ。開けなきゃ。授業受けなきゃ。しかし、その思いとは反対に手は動かなかった。
夜はやりなれない家事をして、早くても就寝は1時。そのため遅刻ギリギリで誰も廊下にはいなかった。1人、ドアの前で動けずにいた。涙も出てきた。どうしよう。どうしよう。だれか、、。
パッと手を取られた。
「ねー、君大丈夫だよ。」
誰?見たことのない人だったけど、何故か家に帰ったような安心感のある人だった。そして、なんで決めつけ口調なんだ?そんなことを聞くよしもなく彼に引っ張られるようにしてどこかに走っていった。意外なことに足はきちんと動いた。屋上だ。
ほとんど来ない屋上はどこの世界より輝いて見えた。
「あー、ごめん。勝手に連れ出して。
なんか辛そうに見えたから。辛そうだとこっちも見てて辛いから。」
優しい笑顔を浮かべる青年だった。
上靴を見ると緑色なので高校2年生なのだろう。
「にしおかあお。雲って書いてあお。変わってるけど俺は好き。」
にしおかあお、か、、。笑顔が素敵なこの人は私と真逆だと感じた。
「あさのもえ、です。浅いに野原の野で浅野です。あさのでお願いします。」
でも同時にそんな真逆な彼を知ってみたいと思った。