「これ2年1組に持ってってくれる?」
先生に頼まれた。
正直行きたくない。
あのクラスではいじめがあるのだから。狭い学校で噂はすぐに回ってくる。渋々行ったのだ。
この後の運命を変えるとは知らずに、、。

「失礼します。一年の浅野萌です。届け物です。」
言おうとドアを開けた。
でも目の前の状況がそれを許さなかった。
いじめの現場だったのだ。どうしよう。人生初のことにちょっとテンパった。で、言ってしまった。
「今どき人生長いんですよね。今ここでしたこと後悔し続けますよ。やめるのが自分の為であり人の為です。」
主犯格らしい男の人が立ち上がった。男の子と言う言葉が似合わない大人びた人だった。殴られるかな。
でも。彼は一歩も動かなかった。
そして、何故かこちらを向いて顔をあげたのだ。彼の目は涙でいっぱいになっていた。今までずっと下を向いていたので、気づかなかった。
彼は優しい表情で言ったのだ。
「ありがとう。ほんとにありがとう。
バカだよな。何も罪のない人に八つ当たりして、ごめんですまないよな。でもごめんなさい。」
彼は元はこういう人だったのかも知れない。もちろん知らないけれど。
それから、いじめは綺麗さっぱりなくなったらしい。いじめ事件以降私といじめっ子君は仲良くなった。
元はこんな優しい人だったのだ。
そして、彼と付き合うことになった。名前は羽根田創也。
この先の運命を自分の手で変えてしまったとは気づきもせずに、、。