俺は根っからのいじめられっ子だった。
陰キャで暗くて、勉強ができて、気が弱くて。
本格的にいじめられ始めたのは2年だったけど、それまでもちょこちょこそういうことはあった。
でも、いじめはすぐに止んだ。
もえなんだ。
僕は大阪生まれ大阪育ちだ。
逆に今までもえに関西人だとバレなかったほうが不思議なくらい、僕には関西弁が染み付いていた。
でも、もえも関西人だから気づかなかっただけなのだろうか。(友達からも言われたことはないが)
僕は大阪の中学校に通っていた。
気づいた?
僕と萌は同じ中学校に通っていたんだ。もちろん創也も、
僕は創也にずっといじめられていた。僕は災害で親を亡くして、片親だった。それがいじめの原因。
親が忙しく、家にいなくて自立しすぎていたのだ。親は悪くないのだか。
でも、ある日下級生の女の子が教室にきて、すごく驚いていたようだったから無視されるのかと思ったが彼女は言ったのだ。
“今どき人生はながいからここでやめるのが自分の為であり人の為だ”と
この言葉があったから、僕は強くなれた。この言葉があったから今までやってこれたし、このおかげでいじめは止んだ。
僕はこの子に感謝しかなかった。
僕はこの子のおかげで勇気を持つ事を学んだ。前に進む大切さに気づいたのだ。
後日、一躍有名人となった彼女の名前がわかった。
 あさのもえ 浅いに野原の野、萌え袖の萌wで浅野萌。
いつか、お礼を言いたい。
いつか、君と話せたら、必ず。
そして、困っていたら必ず助けたい。
そのもっと後、創也ともえが付き合っていることを知ったのだ。

「萌なんだ。僕が僕でいられるのはもえのおかげ。本当にありがとう。」
「え、じゃああの時の人なの。
ほんとに私がくもくんの人生をかえたん、、?」
「ほんとやで。ありがとうな。」
私は理解が追いつくまで少々時間を要した。
くもくんがあの時私が助けた人だったなんて。
元気かなとは思っていたけど、まさかこんなに近くにいたなんて。
「もえ、もう一つ言わせてよ。」
なに、もう頭追いつかないよ。
「好きだ。僕は優しくて、どこまでも優しくて、人の事をすごく大切にする。そんなもえが大好き。でも、もえにはもっと自分を大切にしてもらいたい。だけどもえのことは僕も大切にしたいんだ。」
え、そんな事あって良いの。
こんなに自分勝手で、臆病な私を愛してくれていたの。
言いたい。この人なら受け止めてくれる。そんな気がした。
「くもくん。聞いてくれる?私の話。」
「もちろんだよ。」
私はそれから自分の過去に起きたことを一つ一つ話していった。
聞いたら幻滅されるかもしれない。
笑えないのはくもくんの大切な友達のせいだと知ったら傷つくかもしれない。でも、言わずにはいられなかった。この気持ちを受け止めてくれる、そんな人に出会ってしまったのだから。

「もえ、これからは、ううん。これからも大切にしたい。付き合ってくれませんか。僕はそのままのもえもいつものもえもすっぴんももえも。今、萌の全てが愛おしい。」
「もちろんです。
こんな私でいいなら。」
「そんなもえがいいの。」
どこまで優しい人なの。
今までの思いを全て受け止めて次に進ませてくれる。
そんなあなたに全ての思いを伝えます。
「好きだよ。くもくん。」
とびきりの愛を込めていった。
くもくんはすごく驚いた顔をして、私を見ている。そして、涙を流しながら言ったのだ、
「もえ、笑ってるよ。」
とびきり優しい顔で言った。
もう笑うことはできないと思っていた。けれど、この人の優しさにこの人の温もりに触れたから。私は大事なものを取り戻した。
「ありがと。」
次は枯れたはずの涙が出て来た。
人を傷つけるのは人。でもね、大切なことに気づいたの。人を救うのは、人の傷を癒すのは人なんだって。
そしてこの日は人生で一番の思い出になった。