sideシェリエ

次の日、ロロドロア様と私はドレスを買いに王都の中心地まで向かった。

「シェリエ、ドレスは遠慮なく高いのを選んでくれ。
それくらいの貯金はあるから。」

「ありがとうございます。
ねぇ、ロロドロア様?」

私は少しイタズラっぽく声をかけた。

「何だい?
そんな顔をして尋ねる時はろくな事が無い気がするけど。」

ロロドロア様は鋭い。

「ドレスは最優先として。
その後、この間の王都誘拐事件の現場に行ってみませんこと?」

「はぁぁぁあ…
全く仕方ない奥様だ…
ドレス選びよりも熱心にしそうだ…」

ロロドロア様は大袈裟にため息を吐く。

「あ、あら、ウェディングドレスも楽しみですわ!」

私は言う。

そんなこんなで、王都のベルというドレス屋に到着した。

「これは、これは、魔導士団・副団長のロロドロア様でございますね?
今日はどの様なドレスをお探しで?」

店主が出て来て挨拶をする。

「あぁ、彼女のウェディングドレスを買いに来たんだ。
良い奴を頼むよ。」

「かしこまりました。
これは美しい奥方様で。
さ、さ、こちらへ!」

私たちはウェディングドレスのコーナーに案内された。

「これ、似合いそうですね。」

ロロドロア様が素敵なウェディングドレスを指した。

「素敵ですわね。
試着を…」

その時…!

「これは!
ライザリア侯爵ご令嬢のサラナ様!!!
ようこそ、いらっしゃいました!!!」

「ふふふ。
そのドレスいただくわ。」

サラナは私の握っているウェディングドレスを指差した。

「は、は…
こちらは…」

困る店主に、サラナは言う。

「あら、お金なら倍額払うわよ!
そんな貧乏人に優先して売るつもり!?
私はライザリア侯爵家次期当主なのよ!?」

サラナは厳しい口調で言う。

「サラナ嬢、この世界はあなたを中心に回っている訳ではありませんよ?」

ロロドロア様が言う。

だけど、私は…

「…構わないわ。
店主さん、サラナにこのドレスを…」

「そ、そうですか?
いやぁ、すいません!」

「当然よねぇ?
こんな高いドレスを買うお金を節約して差し上げたのよ。
感謝していただかないと?
おーほっほっほっ!」

サラナはウェディングドレスを従者に持たせてドレス店を後にした。

「シェリエ…」

「平気ですわ。
このドレスどうかしら?」

不思議だった。
あんなにも憎んで憎んで殺そうとまでしたのに、今はどうでも良いという感覚に近かった。

思えば、次期当主として育てられていたあの頃、本当の愛情には恵まれて無かった気がする。

それを教えてくれたのは……

結局、私は2番目に気に入ったドレスを買った。