sideサラナ

私は姉が大嫌いだった。

その美貌、その賢さ、その魔力の高さ。
非の打ち所がないと賞賛され、いつも社交界の中心で、私は影に埋もれて居た。

みな、シェリエの美貌に心頭し、シェリエは私の初恋の伯爵までを虜にした。
私は彼女に近づく為に使われたのだ。

大っっ嫌いだった。
目障りだった。

居なくなれば良いのに、と、何度も呪った。
その呪いは地獄に届いた様だった。

シェリエはライザリア家の象徴とも言える治癒魔法が使えなかった。
これは、致命的である。

父母も冷たくなったし、ほぼ部屋の中に閉じ込められた。
私はここぞとばかりにシェリエの無能ぶりを言いふらし、彼女のドレスや装飾品を根こそぎ取り上げた。

さぞ、悔しいに違いない。
蝶よ花よと育てられ、何の非も無かった彼女が、今やライザリア家の恥晒しなのだから。

私はロロドロアとか言う魔導士団・副団長との縁談を進めるように父母に提案した。
父も母も、大喜びでそうした。

可哀想なシェリエ。
白の質素なワンピースを着て洗濯板を買っていた。

私の優越感は最高潮にも達した。

だが…

何かむしゃくしゃした。
何にイラついてるのか、私にもわからなかった。

あそこまで突き落としたのだ、もう良いだろう、と思うのだが、夢に出てくるのは社交界で華のように笑うシェリエだった。

もっと、もっと、地獄に突き落としてやらなくては気が済まなかった。

そんな時、ライザリア家の舞踏会で、ある噂を聞いた。

シェリエとロロドロアとか言う男が、エドヴァ城で挙式し、披露宴舞踏会を開く、というのだ。

は?

なんで、貴族でも無いロロドロアと、その騎士階級に嫁に行ったシェリエがエドヴァ城で舞踏会を開くわけ???

しかし、それは皇帝陛下の計らいだと言う。

癇に障った。
あの女が、まだ貴族のように振る舞うなんて!
許せない…!

私の夢にシェリエが出てこなくなるには、あの女をもっと苦しめる必要がある。
そう思ったのだ。