sideロロドロア

ムカつく女だ!
俺の部下までたらし込んで!

しかし…

その為に来たのか…?

いや、多分違うだろう。

では何故?

???

俺には訳がわからなかった。
彼女と結婚してから(まだ挙式はあげてないが)、訳がわから無いことばかりだ。

初めての経験。
初めての感情。
初めての気持ち。

全く、冷酷魔導士と呼ばれる俺が酷いザマだ…

でも、今までで一番人間らしいかもしれない。

そんな事を思っていると…

「おい、ロロドよ。
何やら、ニヤけているところ悪いがな。」

ゼンスさんが唐突に部屋に入ってきた。

「べ、べ、別にニヤけてなど…!」

「それは置いておいて。
サラナ嬢が、シェリエ嬢、つまりお前さんの奥方を訴える、と言って騒いでおられるそうだぞ?」

ゼンスさんはそう言った。

はぁぁぁあ…
一難去ってまた一難、という訳か。

「俺がサラナ嬢のお相手をしましょう。」

俺はかなり面倒くさかったが、そう言った。
訴える、と言っているものを、放置はできないだろう。

「そうか。
じゃ、この部屋にお通しするぞ。」

♦︎

「どうぞ、おかけになって下さい。」

俺は礼儀正しく言った。

「いいえ、結構ですわ。
革のソファかミンクのソファしか肌に合いませんの。」

サラナ嬢は言う。

あぁ、そうですか…
まだ、シェリエの世間知らずが可愛く思えた。
いやそうでなくても彼女は可愛いのだが。

「それで。
訴訟を起こされるとか。」

「もちろんですわ。
貴族の、ライザリア家のご令嬢を殺そうとしたんですもの!
きっちりと賠償金を払っていただきますわ!
それとも?
投獄されるかもねぇ?」

サラナ嬢は歪んだ笑顔で言う。

「訴えるとおっしゃっていますが…
シェリエが何をしたのでしょうか?
俺には覚えが全くありません。」

「なっ!
私の馬車に火を放ったじゃあないの!」

「は?
その外傷はありますか?
あぁ、火で偽装しようとしても無駄ですよ。
魔法の炎の傷は特殊なんですよ。」

「なっ…
しょ、証人が居ますわ!!!
きっと、あの時歩いていた人とか!」

「へぇ。
俺が周囲に聞き込みしたところ、あの時刻は何も起きてなかったと、みな証言していますがねぇ?」

「そ、そ、そんな事無いわ!」

「では、せめて証人を連れて来てください。
そして、証拠も提示しないといけませんよね。
馬車に傷も無し、あなたに怪我も無し、それで訴えが通りますか?
ない頭で考え直した方がよろしいかと…
ライザリア家に泥を塗ることになりかねませんよ。」

サラナ嬢は怒り狂い、ドレスを引きずってドスドスと帰って行った。