sideシェリエ

悔しかった…
いいえ、悔しいと言う言葉では言い表せ無かった…

サラナは私を馬鹿にし続けてきた。
私が治癒魔法が使えないとわかったあの日から…

屈辱だった。
ライザリア家の次期当主として、サラナはそれまで私に意見など出来なかったのに…
まるで、ボロ雑巾を見るような目で見られた。

私の煌びやかなドレスや装飾品は全て彼女が持って行った。

私に残ったのは、僅かなワンピースだけだった。

社交界では、あの女は欠陥品だと言い広められた。
私を慕って居た男性はみな、サラナに靡いた。
あのアメジストの瞳と胸で誘惑したようだ。

それでも、家族だと、自分に言い聞かせた。

しかし、ロロドロア様との縁談を持ち出したのは、誰でも無いサラナだった。

それを知った時、私は自分の誇りと命をかけて復讐することを選んだのだ。

「シェリエ…
君は間違っている…」

「間違っている、ですって?
私は、誇りを捨て、踏み躙られるくらいならば、相手を殺して死を選びます…
あなたはそれを阻止したのよ…?」

「死んだら誇りもクソも無いだろう。」

「いいえ、誇り高き死を選ぶ事は出来るわ。」

「君はまだ、魔沸点さえも知らない…」

魔…沸点…
何を言ってるいるの、この人…?

「話をすり替えないで…」

「とにかく帰ろう。
ここじゃ、凍えてしまう。
さぁ…」

「一人で立てますわ…」

そして、私は馬車に乗り街外れの屋敷に戻った。
何も…
一言も喋らなかった…

喋る事など思いつかなかった。