「えぇ!?
金貨1枚が残っていた?
何故犯人はそんな中途半端な額を残したのかしら?」

私は言う。

「流石に全部盗るのは悪いと思ったんじゃ無いか?」

シャルナーク様が性善説もどきを唱える。

「人の財布を盗む人ですよ?」

私は肩をすくめて言う。

「でも、金貨1枚残っていたからって…
何かのヒントにはならないでしょうし…」

ナタリーが言う。

「ん?
いや、ちょっと待って!
何だかおかしいわ!
この事件!」

私は言う。
何かが出てきそうなのだが、もう一息だ。

「何がおかしいのだ?
財布が盗まれて、中に1枚金貨があった。
最初は10枚入っていたのだから、立派な窃盗だろう?」

シャルナーク様はおっしゃる。

その言葉で私は閃いた!

「犯人が分かりましたわ!
犯人は…










侍女のミーナですわ!」

「えぇ?
何故なんですか?
彼女は財布を拾ってくれて、僕のところに持ってきて、お金が盗まれている、と警告してくれたんですよ?
何も怪しいところなんて…」

ローズリート様がおっしゃる。

「そこですわよ!

いいですか?
シャルナーク様、ローズリート様、ナタリー、ポーラ、セスナ?

拾われた財布には金貨1枚が入っていたのですよ?

もしも、ポーラ、あなたが金貨1枚入っている財布を拾ったら、お金が盗られていると分かる???
いえ、普通は最初から金貨1枚かもしれない、と思うわよね?
空っぽだったら、盗られているかも、と思うのは分かるけどね。

ねっ?
つまり、ミーナは最初に金貨10枚が入っていたのを知っていたのよ!
だから、1枚しかないのを、盗られている!と断言したの!!!

犯人はミーナですわ!」

私はそう説明し、結論づけた。

私の推理にミーナは観念し、母親の手術費に金貨9枚が必要だったと、涙ながらに語った。
だから、金貨9枚しか盗らなかったのね…
中途半端な優しさが仇となったわね…

しかし、なんと無く後味の悪い事件だった。

ミーナは侍女をクビになり、後宮から追放された。

こうして2度目の後宮事件は終わりを告げたのだった。

「さぁ、事件の後にはパーっと食べましょう!
今日のメニューはお好み焼きですわよ!」

「オコノミヤキ…?
そなた不思議な料理ばかり作るなぁ?
なんだ、そのオコノミヤキとは?」

「異界風しょっぱいパンケーキみたいな物ですわよ。
さぁ、みんなで作りましょうね?
シャルナーク様には、キャベツの千切りをしてもらおうかしら?
この間教えましたわよね?」

「ゔっ!?
どうやってやるんだった…?」

おそるおそる聞くシャルナーク様。

「もう忘れてるんですの!
私は一度しか教えないと言ってるでしょーが!
オウムじゃ無いんですのよ!」

今日も楽しい?料理教室が始まるのだった。