「では、次は侍女のターニャに事情を聞きましょう。」

そして、ターニャを呼んだ。

「わ、わ、私は、ただ掃き掃除当番で庭を掃いていただけにございますれば…」

ターニャは言う。

「みんなに聞いている事ですよ。
不審な人物など見かけませんでしたか?」

「いいえ…
本当に掃いていただけで…」

「ありがとうございます。」

そして、最後に財布の発見者の侍女のミーナにも話を聞いてみることにした。

「ミーナ、あなたが財布を発見したという事ですが…
まずは、なぜローズリート様の物だとわかったのですか?」

「何故って、ローズリート様の宝石のルビーが財布にはめ込まれていましたから…
それで、これはローズリート様の物じゃ無いかと…
確信は持てませんでしたが、ローズリート様にお届けしたのです。」

なるほど…
確かにこの国の王子には、それぞれ固有の宝石がある。
ザルトハック様はダイヤモンド。
シャルナーク様はエメラルド。
ローズリート様はルビー。


というように…
それぞれの宝石は王子しか身につける事はできないことが法律でも明記されている。

「で、ローズリート様にお届けした、と。
その時、財布の中身は見ましたか?」

私はさらに尋ねる。

「え、えぇ。
もしかしたら、身分証かなにか入って居るかもと思って…
でも、私が見た時には、盗まれた後でしたよ!」

ミーナは言う。

「なるほど。
ありがとうございました。
以上でございます。」

私は言った。

そして、シャルナーク様、ナタリー、ポーラ、セスナは一旦私の部屋に戻った。

「全然誰が犯人か分からぬな。」

うーん、と考え込むシャルナーク様。

「うーん、これだけの状況では無理ですね。」

私も賛同する。

「私はターニャが怪しいと思いますの!」

探偵・ナタリーが言った。

「なぜなの?」

「だって、あの朱色の財布ってローズリート様の財布の色を言い当ててましたもの。」

ナタリーは自信ありげに言う。

「うーん、なるほど。
でも、それだけじゃ犯人と確定するのは弱いわね。」

私は言った。

「「「「うーん…」」」」

そうやって私たちが悩んでいると、ローズリート様が久しぶりに私の部屋にお越しになった。

「何の用だ?」

シャルナーク様が嫌そうに言う。

「そう言えば、言い忘れた事があって、それを伝えにきたんですよ。
エレナ、あなたにね。ニコ」

「…良いからさっさと言え。」

シャルナーク様。

「えぇ、実はお財布は空じゃなかったんです。
金貨1枚だけ残っていまして…

でも、こんな情報、なんの手がかりにもなりませんよねぇ?」