その日もシャルナーク様はやってきた。

「や、やぁ、エレナッ…!」

挨拶がかなりぎこちない。

「あ、あら、シャルナーク様ッ…!」

私も負けじとぎこちない。

「まぁまぁ、ご馳走様ですわねぇ。
ねぇ?ポーラ?セスナ?」

ナタリーがわざとらしく手を鳴らしてそう言った。

「な、な、何を言うのよ、ナタリー!
挨拶しただけじゃないの!」

私は言う。

「そ、そ、そうだ!
その通りだ!」

言えば言うほど、シラーっとした視線を送られてしまう。

「ご、ごほん!
そ、そろそろ俺は行かなくてはならない…!」

「え…
来たばかりじゃないですの?」

しょぼんとして言う私。

ナタリー達のニヤニヤした視線が飛んでくる。

「いや、それが…」

「?
どうしましたの?」

私は尋ねる。

「また、この後宮で事件が起きたのよ。」

「ま、まぁ!
また、事件が!?」

身を乗り出す私。

「そなた何だか嬉しそうだな…」

「い、いえ、そんな事は…!
で、で?
どんな事件ですの!?」

「あぁ…
今度はどうやら窃盗らしい。」

「窃盗!!!」

血が騒ぐのを止められない私。

「そなた本っっっっ当に変わっておるな!
事件と聞いて目を輝かせるのはそなたくらいのものだぞ。」

やれやれ、とシャルナーク様は呆れたご様子だ。

「いいから、事件の概要を…」

「はぁ…
分かったわかった…

今回の被害者はローズリートだ。
事の起こりは昨日の昼間1時頃。
ローズリートは後宮の庭で昼寝しておったそうだ。
そして、起きてみると金貨10枚が入った財布が盗まれていた。
それを、後宮管理役のゼンリュートに通報したらしい。
俺も後宮の管理には携わっているからな。
それで、財布を盗んだ犯人を探している訳だ。」

シャルナーク様は説明した。

「なるほど…」

「では、俺は本当もう行くぞ?」

「ナタリー、ポーラ、セスナ!
私たちも行きましょう!」

「何故だっっ!?」

シャルナーク様がツッコミを入れる。

「あら、以前事件を解決したのは、私でしてよ?
今度だってきっと!
ねっ?
役に立ってみせますから!

お願いですから、連れて行ってください!」

私は言う。

「仕方なの無い奴だな…
今回だけだぞ…?」

シャルナーク様は言う。

「えぇ!えぇ!」

という訳で、被害者のローズリート様にお話を聞きに行くことになった。
後宮のホールにいらっしゃるローズリート様に話を伺う。

「エレナ!
あなたが来てくれるなんて!
なんて幸運なんでしょう!

最近釣れないから、落ち込んでいたんですよ。」

「はぁ…」

「エレナは俺との《《結婚》》の準備で忙しいのだ!
当然だろう?」

シャルナーク様が威嚇するように言う。

これでは、話が一向に進まない!
私は話を修正して、事件について切り出した。