sideシャルナーク

ピクニックはエレナのサンドイッチに話題が集中し、すっかり主役の座を奪われてしまった。

だが、エレナが嬉しそうに笑うのを見ていて、俺は心から嬉しかった。

料理令嬢だと蔑まれてきたはずの彼女の料理が次第にみんなに受け入れられてきている。
その事実は俺の心を明るくした。
そして、きっとエレナの心も。

その日、俺は生まれて初めての髪切りをする事になった。
肩に降りかかっている髪はそれはそれで、似合ってる?らしいのだが、不揃いで、少し清潔感に欠ける。

だから、今日綺麗に整えようと思う。

王都1番の理髪師を呼んで、シャンプーしてケープを巻き万全の状態で髪切りに挑んだ。

「頼んだぞ!
理髪師とやら!
俺のもふもふヘアーを綺麗に切ってくれ!」

「はい、かしこまりました!
シャルナーク様、そんなに力を入れないでもっとリラックスしてください。」

理髪師は言う。

「ばか!
初めての髪切りだぞ!?
リラックスなど出来るはず無いだろ!」

俺は言う。

そして、この髪切りが終わったら俺は真っ先にエレナに見せにいくんだ!

「では、切っていきますね?」

「ま、まて!
お別れ会をする!」

「はぁ…?
お別れ会…?」

理髪師はキョトンとしている。

「そなたには情緒というものが無いのか!
もふもふヘアーとのお別れ会だろ!」

「はぁ…
時間かかります?」

「えぇい!
急かすな!

もふもふヘアーよ、しばしのお別れだ…
また、たくさん生えてきてくれよ…

よ、よしっ!
いいぞ!
切れ!」

「はい、では、切りますよー?」

「ま、待て!」

「今度は何ですか!?」

「うむ、俺は右利きだからな。
左側からだと縁起が悪い気がする。
右から切るんだ!」

「はいはい。
では、切ります!」

バサッ…!

俺の髪は無情にも切り落とされた。

「き、き、切り過ぎじゃ無いのか!?」

「大丈夫ですから、少し口を閉じられてくださいねぇ!怒」

その後もあぁでも無いこぅでも無いと言いながら髪切りは終わった。
最後にオイルを塗ってオールバックにセットしてくれた。

「おぉぉぉぉぉお!
イケてるぞ!
なぁ、理髪師よ!」

「えぇ、かっこいいですよ!」

理髪師が疲れ切った笑顔でそう言った。
俺は金貨4枚を理髪師に与えた。

「こ、こ、こんなに…!
ありがとうございます!」

「いや、俺こそありがとう。」

そして、俺は真っ白の正装に着替えて、花束と指輪を持ってエレナの部屋に向かった。

そう…
今日プロポーズするつもりだった…

果たして彼女は俺のプロポーズにどんな答えを出すのだろうか…?

それは誰にも分からなかった。