ガイコツ王子は気を失ってしまったので、私の部屋のベッドで様子を見る事にした。

多分どこも異常は無いだろうが、一応医師を呼んでおいた。

「いえ、どこも異常はございませんよ?
それより、以前から比べると遥かに栄養が増しておられます。
一体どんな薬を飲んだのかと…?」

医師は不思議そうに首を傾げる。

「ま、まぁ、人間自己治癒能力というものがありますから…!」

私は適当に誤魔化して医師を帰らせた。

少しして、ガイコツ王子が目を覚ました。

「ん…
エレナ…」

「大丈夫で御座いますか?」

「夢を見て居たのだ…
髪の毛が生えてそなたと笑い合っている夢を…」

「それは…

現実に御座いますよ。
ほら。」

私は手鏡をガイコツ王子に渡した。

「おぉぉおぉぉぉ…
夢は誠であったか…!」

ガイコツ王子は一筋の涙を流しそう言った。

「えぇ。
私と笑い合っていたのも、きっと夢ではなくなるでしょう…
シャルナーク様、泣かないでください…」

「な、な、泣いてなどおらぬぞ。」

「はいはい。

それよりも、お腹は空きませんか?
夜食を一緒に作ろうかと…」

「…《《一緒に》》?」

戸惑っているガイコツ王子に、私は尋ねる。

「えぇ、たまには一緒に作るのも良いでしょう?」

「そなた、料理となると鬼になるでは無いか…」

責めるような目で見つめてくるガイコツ王子。
こう見ると、顔は随分整っている。

「そ、そ、そんな事ございませんわ!

きょ、今日は、ほら、シャルナーク様からいただいた卵焼き器で卵焼きを作ろうと思ってますのよ。」

私は優しく言ってみる。

「怒鳴らぬか…?」

「えぇ、怒鳴りませんとも…」

間違え無ければ、ね。

そして、2人でだし巻き卵焼き作りが始まった。

「まずは、出汁と醤油で作る方法もありますが、今日は面倒なのでめんつゆで作ります!」

「メンツユ!
なるほど、よくわからないが、便利なのだな!?」

「その通りです!
では、まず、めんつゆと卵を混ぜます。

この時菜箸という物で、縦に切るように混ぜます。
やってみてください。」

「こうか!?」

「ふむふむ、中々良いですよ!」

そして、焼く場面になった。

「良いですか?
さっき私がやったように卵を巻いていくだけです。」

「そう簡単に言われてもなぁ…

おぉ、卵が固まった!
まずい!
巻けぬぞ!」

「えぇい!
何をやっているんです!

気合いで巻くんです!

さぁ、巻けたら次の卵液を…!
何やってるんですかぁぁ!!
油は適宜塗ると言ったでしょ!?」

そんな感じでドタバタやって、やっとだし巻き卵焼きが出来上がった。

「やはり、鬼ではないか!」

「まぁまぁ、食べましょう。
あら、シャルナーク様って金髪だったのですね!」

私は光を浴びた髪(うぶ毛)を見て、今更ながら気づいた。

「あぁ。もうガイコツとは言わせぬぞ!」

私たちは笑い合って卵焼きを食べた。
シャルナーク様の夢の中のように…