「セリーナは辺境伯のご令嬢でしてね。
頭もいいし、歌は上手いし、僕はすぐに彼女を気に入りました。
しかし…

まぁ、僕は遊び人ですからね。
色々な女性に手を出してきました。

だから、新しく気に入られたセリーナの事を気に入らない側妃も多くいた事でしょう。」

ローズリート様はおっしゃった。

「ちなみに何人くらい惻妃がいらっしゃるのですか…?」

私は尋ねる。

「うーん、今で27人か28人くらいでしょうか…
正確な数字は正直よく分かりませんね。」

ローズリート様はいけしゃあしゃあと言った。

「28人!?
で、ございますか!?」

私は驚いて言葉も出ない。

これでは、犯人を突き止めようにも人数が多すぎる…

「その中で、セリーナ様に強い恨みを持つのは誰でしょうか?」

「えぇー?
難しい質問ですねぇ。
でも、そうですね。
ハンナ、ベラ、アリシア、ダリア辺りでしょうかね?

彼女達は僕がセリーナと出会ってから、おざなりにされた惻妃ですからね。」

「ありがとうございます。
少し事件の真相に近づけた気がしますわ。

そうだ、シャルナーク様?」

私はシャルナーク様に話を振る。

「なんだ?」

「チョコレート菓子がどの店の物なのか見当は付いてまして?」

「もちろんだ。
ココーナという王都の店の物らしい。
明日全く同じ菓子が届く予定だ。
そなたにも渡そうと思う。」

「ありがとうございます…!

では、今日は以上ですわ。
シャルナーク様、ローズリート様ありがとうございました。」

そして、2人は首を傾げながら帰っていった。

♦︎♦︎♦︎

翌日、また、2人はいらっしゃった。
いや、3人だ。
第5王子のゼンリュート様もご一緒だった。

「すまぬな。
大人数で押しかけて…」

「いいえ、初めまして。
ゼンリュート様、シャルナーク様の妃のエレナでございます。」

「これはご丁寧に!
兄上をよろしく!
はっはっはっ!」

ゼンリュート様は明るく精悍な感じの美青年だった。
対してローズリート様は人形のように精巧な美しさがある。

なぜ、ガイコツ王子だけ、ガイコツ…?

それは置いておいて。
私はダージリンを入れて、そのチョコレート菓子をみんなで食べることにした。

「普通に美味しいですわ!」

ナタリーが言う。

「うん、美味しい…です…」

セスナ。

しかし、私は一口食べて気づいた。

「これは、殺人チョコレートですわ!」

「は?
誰も異常は無いではないか。」

ポカンとして言うガイコツ王子。

「いいえ、今回の事件は間違いなく殺人事件でございます。
そして、犯人はこのチョコレート菓子をセリーナ様に渡した者に間違いございません。」