そして、皇帝陛下の寵姫としても名が知れ始めた頃。

相変わらず皇帝陛下は私の部屋に入り浸りだった。
とは言え、初夜をするでもなく、戦法や国興しについての話ばかりをしていた。

「して、そなたは補給部隊を壊滅して、バトルボードゲームでイグナードに勝利した、と言うのか?」

「おっしゃる通りにございます。」

「あまりかっこいい勝ち方とは言えんな…」

眉を顰めて言う陛下に私は物申す。

「恐れながら陛下…
勝ち方に、かっこいいもカッコ悪いもクソもございませんわ。
要するに戦いにおいては勝つことが全てなのですから。

確かに私の戦い方は防戦一方にも見えます。
しかし、ならば、陛下は防戦のやり方を習うべきだと考えます。」

「習う、だと?
百戦錬磨の戦の将たる俺に言っておるのか?」

皇帝陛下は不機嫌そうに口を歪める。

「百戦錬磨…
まさにそうでございましょう…
智略に富み、謀略も心得、したたかな賢さもある…
皇帝陛下にすれば、防戦の戦いなどは()()()()()と切り捨てることやもしれません…」

「何もそこまでは言ってはおらぬよ…」

「いいえ、そう(おご)っておられます。」

「何!?
俺が驕っていると申すか!?」

「まさに!」

「俺は常に自分を冷静に見ておる!」

「いいえ、それでしたら、私の戦いから何かを学ぶはずでございます。
皇帝陛下はカッコ悪いと、一蹴されました。
そこに驕りがあるのです。」

「俺に守りによる戦いをせよ、と?」

「必ずしもしなくても構いませんが、心得ておく必要はございます。」

「補給部隊…な…」

「それで思い出しました。」

私は話をさりげなく変えた。

「何をだ?」

「補給部隊は実際の戦いにおいても非常に重要でございますよね?」

「もちろんだ、軽んじてはおらぬ。」

「で、あれば…
この国には為すべき事がございます。
いいえ、皇帝陛下には為すべき事がございます。」

「何だ?」

「それは支援・補給部隊の経路の整備にございます。
補給部隊が遠回りや道に阻まれる事は戦の勝ち負けに関わります。
この国の道は整備が遅れております。」

「ふむ…
しかし、道の整備となると…
金がかかるな…」

「それでしたら、ルードラの金山の売り上げをお使いください。
ルードラ侯爵には私が話を通しておきますゆえ。」

「全くそなたには敵わぬよ…

…次の夜はもっと深く関わりたいものだ…」

「なるほど…
戦術について深く討論するのも楽しそうでございますね。」

トンチンカンな事を言う私。

「やれやれ、俺は苦労しそうだ…」

そう言って皇帝陛下は苦笑いして帰って行かれた。