「これより、第437回、と見せかけて第1回、奈良のボタン確保のための極秘会議を始めます」

「おねっしゃーす!」

20人以上の男子たちが、いっせいに頭を下げた。

「その会議、オレの前でするのね?」

あぐらをかきながら、たまらずつぶやく。

慶人は、男子バドミントン部の部室にいた。予行を終えたとたん、3年生の部員たちが、いそいそと教室を出ていくのに気づいた。部活はとっくに引退しているし、送別会も終えたのに、と、ついてきてみたらこの有様だ。

キャプテンだった3年の武内が、部員をながめて、演技くさい咳ばらいをする。

「校内では、うちの奈良のボタン予約合戦が始まっている。でもこいつは、それを全部断っているらしい。理由はいろいろ推測されている。卒業式で誰かに告白するつもり説、制服のリユースに出すためにとっておいてる説、ネットオークションでゴリゴリの高値で売ろうとしてる説、『第1ボタンください』を『毎日ごはんください』と聞きまちがえてる説……」

そこまで言って、バン! と壁を叩いた。

「しかーし、オレたちは奈良のボタンを手に入れなければいけない。なぜなら……分かってるよな、福山」