俺たちに白い翼などないのだ。
あるのはただ、赤く染まった汚い翼。

悪魔の翼。
そう教えてもらった。


【狂刀のヘンバー】


曇り空がやけに黒く、雨は鋭く降っている。    
その下で俺は墓石の上に座っていた。

長い栗色の髪。輪郭は細長く、肌は青白い。すらりとしたその体は生まれつきなのか、それとも食べていないせいなのか分からない。それほどまでに俺の体は昔から痩せ細っている。

そして、全身が赤い血で汚れていた。

俺はぐったりと座って目を瞑り、片膝を立てて、その上に腕を置く。

森の奥の墓場の下には、恐ろしく赤い彼岸花が咲き乱れていた。

彼岸花を見ると思い出す。
涙を流しながらお祈りをしている赤い髪の女のことを。

生気のない目をゆっくりと開く。
 
俺は彼岸花に話しかけた。

「祈りなんて無駄だ。望み、祈り、夢、願いも無意味だ。叶いはしない」

 俺は打ちつける鋭い雨を気にせず、ただただ、いつまでも黒い空を見つめていた。 
    
軽く背中に触れ、そして空に向かって言い放つ。

「神よ……なぜ俺は生まれてしまったのか」

 憎しみと悲しみと、そして後悔の混ざった顔で神を呪う。

俺は過去を振り返った。

「あの時も雨だった」