安定した歌声。無駄のないダンス。人懐っこい笑顔。

──今日も推しが尊いっ!


朝、電車に揺られながら推しである桜間翔くんの動画を見る。

それは、私が高校に入ったときからの大切な日課で、それももう今日から2年目に突入する。

そう、私は今日から高校2年生だ。

でも、新しくなるのは学年だけじゃなくて──。


「おはよっ! 結依!」


そう言いながら電車に乗り込んできたのは、河井瑠奈だった。

瑠奈とは、去年のクラスが一緒で同担だったということもあり、すぐに仲良くなった。

今では大切な親友だ。


「おはよう。瑠奈は朝から元気だね」

そう言いながらスマートフォンをしまった。


「当たり前だよ! だって、今日はクラス替えなんだよ?」


結依と一緒のクラスになれますように、と両手を祈るように組んでいる瑠奈の姿を見て、つい、ぷっと吹き出した。


「何がおかしいのよ」