寮へ案内された私は、部屋へ入ると近くにあったベッドへ転がり込んだ。まだ頭が痛い・・・・・・前世の記憶を思い出した途端、学園での面接があって混乱していたが、シャルロット・モルトローズの名前に関して、一つ思い出したことがあった。

 ここは、私が好きだった小説『蒼き霧の晴れる先に』に出てくる舞台そっくりなのだ。ただ、シャルロットは悪役令嬢に嵌められ、身に覚えのない罪で断罪されて、王太子に婚約破棄されたあげく、国外追放となる運命だった。ここまでは変わらない。今現在、起きている状況とも一致する。

 しかし、小説には断罪された少女の、その先の人生は描かれていない。『ユグドラ学園』で、私は一体、どうすればいいのだろうか。

 私は謂われのない罪に断罪されて、国外追放されてしまったシャルロットの人生を嘆くと共に、これからどう生きるか、自分自身の人生に真剣に悩んだのであった。


*****


 次の日の朝、寮で身支度をしていると、昨日のメイドが迎えに来てくれ、教室まで案内してくれた。教室は能力ごとに分かれており、朝のホームルームだけクラスで行うと、その後は聞きたい授業や実習、好きな授業を選択して習得するという形態をとっていた。このあたりは、前世で暮らしていた日本の学校と変わらない。

「シャルロット・モルトローズです。以後、お見知りおきを」

 私が淑女の礼(カーテシー)をして挨拶をすると、教室内でざわめきが起こった。

「嘘だろ・・・・・・あれが魔力量2万の奴か?」
「しかも貴族。美人だぜ・・・・・・」
「やめろよ、そんなこと言うの・・・・・・殺されちまうぜ」

(2万じゃなくて、20万なんだけど・・・・・・)

 教室内のヒソヒソ話が大きくなってくると、教室の扉を思い切り開ける音が聞こえた。

「静粛に!! 急な編入生に驚くのは構わないが、言葉には気をつけろ。私に丸焼きにされたくなかったらな」

 星のエンブレムがついたローブを着た髪の長い女性が教壇に立つと、目の前に手を翳して小さな炎の球を出していた。

「ひっ・・・・・・申し訳ありません、ガルシア先生」

 生徒たちは一瞬で静かになり、朝のホームルームが始まったのだった。