校舎の中へ入ると、メイド服を着た若い女性が学園長室まで案内してくれた。部屋の前まで来ると、中から「どうぞ、お入りください」という声が聞こえてドアを開けた。すると、部屋の中には少女が1人、立っていた。

「あの・・・・・・学園長は、いらっしゃいますか?」

「学園長は、私だけど・・・・・・」

「しっ、失礼しました」

 私より若く見える少女は、一緒に来ていたメイドに指示を出すと、私の方へ振り返った。

「とりあえず、話を聞くわ。あなた、紅茶は飲める?」

「はいっ、大丈夫です!!」

 変なところで意気込んでしまった私に、学園長は微笑んでいた。そして、手前にあるテーブルへ座るよう、私を促したのだった。


*****


「それで・・・・・・シャルロットさん、だったかしら? 学園へ入学したいという事情はお父様から聞いてるけど、あなたはどうなの? 本気で魔術を学びたいと思ってるの?」

 学園長は運ばれてきた紅茶を一口啜ると、真剣な表情で私を見据えていた。

「はい」

「一部の人達からは疎まれているのよ、魔術は・・・・・・それでも、習得したいって言いきれる?」

 私は前世で『魔法』が使えるアニメや漫画、小説が大好きだった。大人になっても『魔法が好き』だなんて、笑われるかもしれないが、魔術が習得できるなんて夢のようだと思った。

「はい!! よろしくお願いします」

「分かったわ。それでは、テストをしましょう。ここは魔術学園・・・・・・知ってのとおり魔術を使うには『魔素』が必要になる。体内に含まれている魔素量が最低でも『20』はないと、学園での実習が出来ないの。だから、体内の魔素が規定値に満たない場合、残念だけど帰ってもらうことになってるわ。あなたの6歳の時の数値が『9』だということだから、おそらくは大丈夫だと思うけれど・・・・・・そこは心得ておいてちょうだい」

「はい」

 そう言った学園長は、部屋の奥にある机の引き出しから水晶のような球を取り出して、私の目の前にあるテーブルの上へ置いた。

「メビウス、魔力測定・・・・・・」

「・・・・・・」

「シャルロットさん、手を翳してちょうだい」

「はい」

 これで魔法が習得できるかどうか決まるという試練に、私はドキドキしながら手を翳していた。すると、数値よりも先に驚愕した学園長の顔が視界に入ってきた。その様子に驚いた私は、思わず水晶の中を覗き込んだ。

『200,000』

(20万?・・・・・・これが学園長の言っていた数値かしら)

「シャルロットさん、合格よ・・・・・・信じられない数値だわ」

「は、はぁ・・・・・・」

「申し遅れました・・・・・・私、この学園の学園長をしております、ミーアと申します」

「シャルロット・モルトローズです。よろしくお願いします」

「寮へ案内させるわ。安心してちょうだい。私、こう見えても年は200歳なの」

「えっ・・・・・・」

 何がどれくらいすごいのか分からないまま、私はメイドの女性に連れられて、学園の寮まで案内してもらっていた。