「間違いありません。彼女が、マーガレット様を殺しました。彼女の飲み物に他枯草を入れたと」

 周りの者がわっと驚き、私は信じられないと言う顔でカデオ様を見た。

 カデオ様は一瞬、本当に一瞬だが、ニヤリと私に向かって微笑んだ。

「この騎士は嘘を言っている! 皆皆嘘つきよ! 私じゃない! 私がやるわけないじゃない!」

「やるわけない? 本当かな、ロザリンド」

 カデオ様は声を張って、言い返した。

「周りにある他の植物をも枯れさせる猛毒草。この他枯草は生半可な知識をもった物には扱えない危険な植物。植物を操る能力をお持ちの君なら植物への知識、そして扱いには手慣れているはずだ。君以外に誰がこれで人を殺そうと思う?」

「そんなの憶測でしかないじゃない! 私が採取したのはたしかに吐戻し草よ!  そんな毒草知らないわ!」

 私が怒りのままに叫ぶと、カデオ様の後ろから皇太子アンジェロ様が現れた。
 
 金髪碧眼の爽やかな顔立ち。
 王子になるべくしてなった私の想い人。
 
 その意中の人が、軽蔑な眼差しで私を見ていた。

「アンジェロ様……! 私はやっておりません。あなたならわかってくださるはず」
「わかりたくもない」

 いつもの優しい声とは違う。冷たく、刺さるような声だ。

「今までの君の素行の悪さには目を瞑ってきたが、もう我慢できない! 彼女の傍若無人さ、皆も我慢してきただろう? どうだ?」

 周りにいた大臣たちは、声を揃えてそうだそうだと言い出す。

「わがまま三昧でこちらも迷惑していたんだ」「マリーティム公爵の娘だからといつもビクビクしていたんだ」「名のある公爵家だから我慢してきたが、彼女は酷すぎる」

 アンジェロ様は大臣たちを鎮めると、父であるオデュロー王に言う。

「ロザリンドは私の最愛の人、マーガレットを毒殺しました。この罪は死に値するものですが、死んで楽にさせるのも私は惜しいと思っています。そこで、辺境の北国、紅蓮地獄と例えられた極寒のサイガーダへ幽閉し、一生の罪をそこで償ってもらいたいのです。陛下。ご決断をお願いいたします」