「カレン。よく似合っているわ」
「お母様。気が早いですわ。花嫁衣装だなんて」
私はそう言いつつも、鏡の前でくるくると回ってみせる。
お母様とその場にいる侍女たちは嬉しそうに微笑んでいた。
「だってアルファース王子の婚約者になったのよ。このリングスフェールドの王子の婚約者! 最高の結婚式にしたいじゃない?」
「まだ日取りも決まっていないのに、お母様ったら」
「ほほほ。そうですわね。それにしても本当に良かった。これも全てウェイツ公爵令嬢のおかげ……」
「お母様!」
「おっといけないいけない。他の衣装もあるのよ。着てみて私に見せてちょうだい」
リングスフェールドの冬は早い。
窓の外を見ると、弟たちは降り積もった雪の中でソリすべりをして楽しんでいた。
この雪国の王子であるアルファース王子との婚約が決まり、我が家は毎日のようにお祭り状態。
特にお母様の調子が毎日こうであるから、どちらが婚約者かわからなくなる。
「カレン! ほらこのフリル可愛いじゃないの! まるで妖精みたい」
「お母様。私もう子供じゃないのよ。もっと大人しいのがいいわ」
親戚同士ということもあり、私は幼い頃からアルファース王子と遊んでいた。
その頃から既に、アルファース王子の頃が好きだった。
将来はこの人と結婚するんだと心から決めていた。