「すまない、エードリング公爵令嬢。君との婚約を破棄したい」

 どこまでも灰色がかった空に粗雑な雪が吹き荒ぶ。
 睫毛の上に粉雪が降り、自然と瞼が下がった。

「わかりました。殿下」

 ここで彼女が死んだ。
 この雪原の上で彼女は。
 あぁ、殿下。
 あなたはまだ、あの方が忘れられないのですね。


【ガラスドーム 〜婚約破棄は雪原の上で〜】