次がないかもしれないなら、今日でいい。動かなくなってベッドの上で眠る彼を涙を流しながら見つめた。ごめんね、ごめんね。何回語りかけても彼は目を閉じて笑っている。大好きだった。大切だった。こんなことするぐらい私愛してた。
 こんな死に方ができるから、私、幸せ者だね。優斗、大好きだったよ。
 致死量の倍の毒薬を飲んで優斗の隣に行く。もう目を開けてくれないその人は、私の宝物で、この生に、後悔なんてしなかった。
 だから、ダメでしょ。こんな所で薬物なんてしちゃうから、だから私に殺されちゃうじゃん。 
 ヘルプなんてしないでよ、ねぇ、もっと自分のこと大事にしてよ。
 ねえ、なんでこんなとこで死んでんの?
 さよなら、優斗。薄くなる意識の中、さっきまで抱いてくれていたその人を、抱き締めた。



 発見された遺体はどちらも美しかったらしい。それは、殺人事件ではなく、合意の上の無理心中として処理された。
享年25歳 水瀬優斗
享年20歳 愛原庵

机上には、筆跡の異なる2文が残されていた。



「×××」とだったらいつだって死ねる。


たとえ地獄の果てでも一緒にいるよ。