そして、夕日が見え出す頃。


桃ちゃんが部活のため1人で下校しようと、靴箱に入った白いスニーカーめがけて手を伸ばす。


「……花山さん、だよね?」

「……えっ?王子、いや黒瀬くん……!?」

「あはは、驚きすぎ」


夕日がさす中、見える黒瀬くんの顔は特に綺麗に見える。

だけど、気まずさにやられてしまいそうな私はさりげなく距離をとっていた。


「僕のこと、嫌い?」

「え?そ、そんなこと、ないよ……?ただ、世界が違うなって思うだけ」

「ふーん、そっか」

「な、なぁに?」


じーっとその綺麗な目が私を見つめる。その目は、死んだも同然で光を宿していない。


「いや、面白いなって。俺のこと、あんな目で見るのお前ぐらいだから」

「……え?」


まさかのお前呼びに混乱する。一人称も変わっているし、綺麗にまとめられた髪も今黒瀬くんが自ら崩した。

だけど、そんな乱れた髪すら美しくて、本当にこの人は美麗な人だと改めて理解する。


そしてそんな彼の手が、私の髪に伸びてきた。


「……興味持った。俺と主従契約、結ばない?」