————1ヶ月前

真っ白な肩まである髪の毛に、黄緑色の瞳をした私は、少し目立ちやすいらしく、よく人にジロジロみられる。



「おっはよ、白猫ちゃん」
「も、もう……白猫ちゃんってなぁに?やめて欲しいんだけど……」


お友達のピンク髪に、赤い瞳が特徴的な桃ちゃんにそう言われて戸惑う。


「猫ちゃんみたいに可愛い顔してるってことだよ?」

「う、うーん、褒められてるのかバカにされてるのかわからないよ、っていうか本当に可愛い猫ちゃんに失礼だし!!」

「あはは、本当猫好きだよね〜」

「あの気まぐれさがたまらないの」

「そっかそっか〜」


うふふふと微笑む桃ちゃん。どうやら、私との話よりもにやけてしまうようなことがあったようだ。

すかさず、その内容を尋ねてみる。


「何かいいことでもあった?」

「ええ〜実はぁ、今日完璧王子!黒瀬様と目があっちゃったの〜!!」

「へ、へぇ……」


また王子様のことか……。


この学園にいる、“完璧すぎる王子様”の噂は毎日絶えない。

私は一度だけ、その王子様と会ったことがある。確かに、とっても綺麗な人だった。

だけど、その瞳の底は——


「でね!!王子様、微笑んでくれたの!」

「そ、そうなんだ、よかったね」

「うん!あんなに綺麗な方と目があって、微笑んでもらえるだなんて……!私ったら、幸せ者だよ!」

「そっか……」


こんなに可愛くて、モテモテな桃ちゃんですら王子様に心を奪われている。

正直、そうやって人の心を容易く奪えてしまうことが羨ましかった。


私も、みんなに注目されてみたいな……なんて。



今日もそんなことを考えながら、ぽけーっと授業を聞き流す。

時計のハリが何度か回ると、お腹が空いてきた。


春休みになったので、桃ちゃんと共に購買に焼きそばパンを買いに行くことにした。

やけに騒がしい廊下に違和感を覚えながらも、教室からでると——