誰が見ても、口を揃えて美しいというだろう。

今目の前にいる、この王子様のことを。



「……黒瀬くんは、今日も笑わないんだね」



私のことを軽々と膝に乗せながら、冷たい瞳でこちらを見つめてきた王子こと黒瀬理緒くん。

灰色の髪に、淡い青色の、透明感のある瞳は狼のようで、油断していると飲み込まれてしまう気がする。



「……知らない」


ふいっとそっぽ向いてしまった。

狼のような見た目でありながら、性格は気まぐれな猫ちゃんのよう。


「降りろ」


そう言われたので、大人しく膝から降りると手首を掴まれる。


「誰が離れていいって言った」

「わがままだなぁ……」


ほんの3日前までは、私たちの関係はこんなものじゃなかった。


きっかけは、単純なことで