「あれれ?
藍ちゃーん、飛び降りちゃだめじゃーん」


ハスキーなその声と共に“アイ”と呼ばれた女の体が空中で抱えられる。


「アカリ、なんでまた邪魔するの」


アイは心底不快そうな顔をして言った。


「藍ちゃんは僕の愛が本物か心配だからそんなことを言うんだよねぇー。
今日も抱いてあげるから安心しなよ。」


“アカリ”と呼ばれた男はニヤニヤしながら答える。


なぜアイもアカリも空中でこんな余裕そうに話ができるのかと言うと、アカリの身体能力が異常だからである。


アカリはおそらくビル50階から飛び降りても傷1つないだろう。


「抱いてくれなんて頼んでない。
私は死にたいだけなの」


アイが死にたいのにはれっきとした理由があった。


アイは生まれながらに親がいない。
なのでアイに生きる意味をつける人間がいないと、アイは生きる理由がないと思い死に急ぐのだ。


アカリはアイにキスをした。