「人をあんまり信用しすぎちゃダメだよ。とりあえず詐欺の件は大人に相談しな」

 生首くんの砂を払うのを手伝ってあげてから、がしょんと自転車のスタンドを戻して乗り込むと、生首くんが九〇度のお辞儀をした。

「本当に助かりました。 ありがとうございます。 このご恩は必ず」
「いいよ、面白かったし。 じゃ」

 その証拠に、さっきまであった暗い気持ちがいくらかマシになっていた。
 浮気されて彼女と別れた俺はまあまあ可哀想だけど、子供に騙され詐欺に騙され砂場で動けなくなっていた生首くんの方が可哀想かもしれないと思うと、そんなことで落ち込んではいけないような気がした。
 俺は救ったんじゃなく、救われたのかもしれない。

 自転車に乗って公園を出た時、ふと見ると生首くんがまだお辞儀をしている。

「はっ」

 社長を見送る秘書かよって、思わず笑いがこぼれた。
 変なやつ。
 もう会うこともないだろうけど、会えてよかったと思った。

 この時の俺は、数日後に新しいクラスの隣の席で再会することを、まだ知らない。