穏やかな日々が過ぎていき、彼の双子の娘たちは美しい女へと成長した。そして、やがて娘たちの結婚式に臨んだ彼は、涙ぐんだ花嫁から感謝の言葉を贈られて号泣した。

 披露宴に招かれた客に化けていたベリタスは、その光景を見てほくそ笑んだ。

 ふん。
 みんな騙されおって。
 この男の真実を知らんくせに。
 嘘にまみれたこの男に感謝だと。
 笑わせてくれるわ。
 愚かな人間どもよ。

 彼の日常は平和な幸せに包まれて過ぎていった。やがて年老いた彼に寿命が尽きる時がやってきた。さすがにその頃には、愚かな彼でもベリタスが神などではないことに気づいていた。

「あなたは…何なのだ。神じゃないとしたら…」
「今頃気づいても遅い。おまえの魂は私の目論見どおりに嘘と虚飾にまみれているわ。ふ、ははは」
「やはり…悪魔…なのか?」

 臨終の床にある彼が力なくつぶやいた。

「我が名はベリタス。ルシフェルに仕える大悪魔だ。愚かな人間よ」
「悪魔め…俺が馬鹿だった」