やがて部長に昇進した彼だったが、今まで身につけた知識とコネを生かして独立、自分の会社を興した。ベリタスから独立をそそのかされたのも彼の背中を押した。

 業績はしばらくのあいだはパッとしなかったが、ある商品の特許を得てからは飛躍的に伸びた。富を得た彼は、仕事漬けの生活に休息が欲しくなり、遊びたいと思ったが、若い頃に、金があったらやってみたいとあれほど渇望していた女遊び、いわゆる風俗関係の遊びには興味が湧かなかった。妻との夫婦関係が円満なせいもあるのだろう。

 しかし…たった一度の人生なのだから羽目を外して豪遊してみたい。

 悶々としている彼の前に悪魔が現れた。

「豪遊してみたいだと?堕落したおまえが考えそうなことだな」
「ですが神さま…」
「余っている金は寄付をしろ」
「えっ?は?寄付ですか?」
「そうだ。おまえのクズっぷりがバレたらいかんからな。社会のためにとか、おまえのような怠惰な輩が考えたこともないであろう社会貢献とやらに金を出すんだ」
「なるほど」

 さすが神さま…なのか?
 
 かすかな疑問を抱きつつも、邪悪な悪魔から言われたとおりに、彼は慈善事業へ資金を注ぎ込んだ。