専用駐車場があるような神社でもなく、俺はすぐ側にあった砂利が敷いてあるスペースに車を停め、俺たちは車を降りた。

「うわぁ、良い天気だなぁ〜!」

今日は快晴で梅雨時期に入ろうとしているのが嘘のようにカラッとした丁度よい気温の日だった。

スタスタと神社の方へ歩いて行く笹森さん。
俺も彼女のあとに続いた。

すると、笹森さんは鳥居の手前で一度立ち止まり、神社に向かって一礼をした。

やっぱり神社好きな人は、こうゆうことするんだなぁ、と思いながら、俺も笹森さんの隣に並び、一礼をする。

そして、ゆっくりと鳥居を潜り、参道を歩き始めたのだ。

さっきまで無風で微動だにしていなかった周りの緑が、笹森さんが歩くと優しい風が吹き、周りの木々たちがそよそよ揺れ始めた。
まるでそれは、笹森さんを歓迎しているかのようだった。

すると、近くでブーンという音が聞こえてきた。
これは、蜂だ。

俺がキョロキョロと不審な行動を取っていると、大きなスズメバチが俺たちの周りを飛び始めた。

俺は、「笹森さん!危ないよ!蜂、蜂!」と慌てて笹森さんに伝えた。

俺の少し前を歩いていた笹森さんは、こちらを振り向くと不思議そうな表情を浮かべていた。

そして、「大丈夫。こっちが何もしなければ刺さないから。」と落ち着いて言ったあと、笹森さんは周りを飛ぶスズメバチに話し掛けるように「お邪魔しますね。」と言った。

すると、笹森さんの言葉が通じたかのようにスズメバチは最後に俺たちの周りを一周だけして、どこかへ飛んでいってしまったのだった。