途中の村で休憩しながら10日間歩き続け、メリーの故郷であるソレイユ村へ到着した。

 メリーの両親は既に亡くなっており、家だけが残っていた。埃を被っているテーブルを見て、「今日は何とか、ここへ泊まれそうですね」と言ったメリーは、村長に挨拶をしてくると言って家を出ていった。

 メリーの家だということに安心してしまったのか、私は座っていたソファでそのまま眠ってしまっていた。目が覚めると窓から見える空は晴れていた。ソファで眠ってしまった私だったが、起きたらベッドの上で寝ていた。

 部屋から出ると、そこは昨日寝落ちしてしまったソファのあるキッチンで、私は眠い目を擦りながらメリーを探した。

「お嬢様、もうすぐ朝食が出来ますのでテーブルの椅子に掛けてお待ちください」

 国外追放されたのだから、もう『お嬢様』ではなかったが、メリーはしきりに私の事をお嬢様扱いしてくる。その事に少し胸がつかえる思いを感じながらも、掃除されて綺麗になっているテーブルの椅子へ腰掛けた。

 卵を焼くいい匂いがした数分後、料理が運ばれてきた。村人が普段食べる朝食とは違うのではないかという疑問を持ちながらも、私は用意されていたナイフとフォークを使って朝食を食べていた。

「お嬢様、今日一日休んだら学校へ向かいます。学校へ着いたら、私は中へ入れませんから、そこでお別れです」

「メリー・・・・・・もう、お嬢様ではないわ」

「いいえ。お嬢様は、お嬢様のままです。私が言った言葉の意味は学校へ着いたら分かるでしょう。それに・・・・・・」

「何かしら?」

「私はお嬢様を学校へ送り届けた後、この村で余生を過ごします。お嬢様さえ、よろしければ、時々遊びに来てください」

「メリー・・・・・・私・・・・・・」

 私は泣きそうになってしまった。メリーは厳しくても、いつも親切で私に優しかった。幼いころは母と勘違いしていた時期もあったが・・・・・・また会いに来て欲しいという。

「大丈夫です。お嬢様は、全て上手くやれますよ。今回は、たまたま運が悪かっただけです。ソレイユ村も国外ですから、会いに来ても国外追放の規定違反にはなりませんよ」

 そう言ったメリーは、私を優しく抱きしめてくれたのだった。