「そりゃあだって、見たらわかるだろ」
「……」
そう言われて真島の視線を辿ってみるが、そこにはいつもと変わらない無表情な長尾さんの姿があるだけだった。
「…いや、全然わからん」
「…お前なぁ…。―とにかくっ、長尾さんはこの店のマドンナなの!とんでもなくかわいいの!」
「…ふーん」
そんなこと、初めて聞いたし。
興味のかけらもない俺に構うことなく、真島は意気揚々と続けた。
「俺も話しかけたけど、そうですか、わかりました、そうなんですね、しか言わねーのよ!…寂しいわぁ…っておい!!佐渡どこいくの!!もう!」
多分だけど全然似てないであろう長尾さんのものまねをかましたあたりで時計の針が開店時刻をさしたことに気が付き、熱く語る真島をおいて持ち場へと向かった。