店内はさほど広くはなく、どこに誰がいるかは一目瞭然だ。
それでも彼女の姿は見当たらなかったため、裏の倉庫へと向かった。
「…誰もいなくね…」
倉庫の扉を開けるも誰も居らず、一人立ち尽くしていると、後ろから声をかけられた。
「あの、」
「うわっ…」
完全に油断していたため、少し変な声をあげてしまったことにまたゲンナリしつつ振り向くと、長尾さんが立っていた。
「すみません、お手洗いにいっていました。店長から倉庫の説明をしてほしいと聞いたので、ついて来てもらっていいですか」
「あ、はい」
長尾さんと会話するのは初日の挨拶以来で、まともに話したことは今日が初めてだ。
それなのに、今からあんな踏み込んだようなことを告げなきゃいけないのか…。
別に言わなくてもいい。
しかしあれのせいで今日のバイトは憂鬱といっても過言ではないし、何より日常にイレギュラーがあるのが気にくわない。
何より言わない方が後々面倒な気がする。
これまでの人生で、こんな経験は今だかつてなかったし、そもそもある訳がないのだが。
こうして対峙してみると意外と自分が神経質ぽく気にするタイプだと、21年目にして知った。
兎にも角にも、早く言って早く済まそう。
「あの、すみません」
「…なんですか?」
「長尾さん、見えてますよ。下着が。」