「———あ、佐渡くん。そろそろ休憩入ってきちゃっていいよ」
昼過ぎの客足が落ち着いたころに、店長から声をかけられ片付けていた手を止めて振り向いた。
「分かりました。ここのテーブル片したら行きます」
「ありがとう。あ、そうだ。長尾さんも一緒に入るよう伝えておいて」
「…」
このタイミング、か‥。
正直あの夜の会話からというもの、なんとなくももさんに声をかけるのに気が引けてしまう。
一緒に帰ることも、あれからしていない。
あのときは勢いで色々押してしまった自覚はあったが、好意の迷惑を知ってるだけにこの気持ちというわけだ。
「…分かりました。声かけてきます」
ただこれはあくまで仕事。
同じ空間に二人というのは今は気まずさしか感じない気もするが、職場という環境がある限りごちゃごちゃ考えず、無でいるよう努めることはできそうだ。
手早く食器やゴミをトレーに乗せて、ダスターで軽くテーブルを拭き厨房へと向かった。