「俺にいるように見える?」





「いや、全く。まあでもよかったわ!!実はさ、お前に会いたいって言ってる子がいるんだよ」







一瞬真顔で答えたくせに、瞬時にあっけらかんと言ったと思ったら、どこからかスマホを取り出し目にも止まらぬ速さで画面に指を滑らせ始めた。







「いやー実は何回も頼まれてて何回も断ったけど、結構めげなくてさぁ…」







ガシガシと乱暴に頭を掻く姿からもこれは相当苦労した案件だと見て取れる。







「一応聞くけど、真島の友達?」





「そうそう。この前店に来たらしいんだけど、お前に一目惚れしたらしいわ」





「そっか。じゃあ俺帰るわ」







真島には悪いが、面倒事は勘弁堪忍ご容赦下さいだ。







「おっとそうはいかないぜ…なぜなら!!もうここにいるからー!!」





「どーもー!こんにちはー!」







いつの間にか現れた女性は、ポンと真島の肩に手を置き屈託のない笑顔を振りまいた。





なんか真島の後ろから駆け寄ってくる通行人がいるなと思ったら、こいつだったのか。







「実はちょうどこの近くにいて、そしたら良《りょう》から連絡あったから急いで来ちゃった!」







少し頬を紅潮させてるのが急いできたからなのか、別の理由なのかは分からないが、前者であることを祈り倒すことにした。







「改めて紹介するけど、 橋島皆実(はしじまみなみ)、俺らと同じ大学で同い年だよ」







真島の紹介を受けて、さらに笑顔に磨きをかけたフルスロットルスマイルを畳み掛けられた。







「初めまして!ぜひ皆実って呼んでね、よろしくね」





「…はぁ」







心の底から気の抜けた返事しか出来ない俺に、大抵の人は遠慮したり離れていく。





けれど目の前の橋島という女は、その笑顔を崩すことなく微笑みも絶やさなかった。







「…じゃ俺帰るから」







これ以上一緒にいたらずっと太陽の光を浴びたみたいにあてられそうだと察知し、早々に退避することにした。







「おいおい!今会ったばっか!!それはさすがに…」







当然真島の非難が飛んでくることはわかっていたが、それを制したのはなぜか橋島だった。







「いいのいいの!突然来ちゃった私が悪いし」





「…まあ、皆実がいいならいいけど」







真島はああも言ってたけど、俺にはこの二人が付き合ってるようにしか見えないし、付き合えばいいと心から思う。







「あ、佐渡くん」







二人が話していた隙に方向転換し静かに歩を進めていたのが橋島にあっさりバレて、仕方なく振り返る。







「…はい」





「私佐渡くんのこと、好きだよ。彼女になりたいと思ってる。これから振り向かせるために頑張るから!」





「………」







隣の真島が思わず赤くなるほどストレートに好意を伝える橋島に、俺は素直に羨ましいと思った。





俺はあの人に、そんなに直球で付き合いたいと言えたことはあるのだろうか。





そもそも、俺はあの人と、どうなりたいんだろう。







「一つ聞きたいんだけど」





「え?」





「俺と付き合って、どうしたいの?」