——ももさんは、俺に興味がない。





その事実を遅れながらも実感した帰り道からは、特に悲しむわけでも嘆くわけでもなく、淡々と変わらぬ日常をこなしていった。





バイトも以前と変わらぬ頻度で行き、ももさんとも頻繁にシフトが被ったが、特に話すこともなく、本当に何事もなく勤務時間が終了しまっすぐ帰宅する日々。





それは今日とて変わりはなく、つつがなく勤務を終えて支度と挨拶を済ませた後、夕刻に差し掛かろうとするまぶしい日差しに目を伏せて、ドアを開け外に出た。






「おーい!佐渡ー!」






後ろから覚えのある声が聞こえたので立ち止まり、振り返って確認する。






「……なんだ真島か」





「なんだ、って!なんだ、って!!」






ちょっとした一言を数メートル先でも拾い上げる真島の地獄耳に心から引いたが、取り敢えずこちらに辿り着くまでは待っておいてやることにした。





その間真島はグチグチと何かを言いながら歩いていたが、生憎俺のところにその思いやなんやらは距離的にも関心的にも届かず、心の中でドンマイと呟いてあげた。





それで終わりでいいのに、まだ何かを言いたげな心の呟きに、自分の事ながらよく分からなくなる。





ぼんやりと見えてた真島もはっきりと見えるところまで来て、彼の愚痴もはっきりと聞こえるはずなのに、ずっと別の誰かの景色を見ているように耳に入って来ない。





何の変哲もない日常。





まるで何事もなかったかのような。





あの夜の出来事が夢だったのかと思うほどに。 





あの夜から何度もその思いが巡っている。





まるで思考のスイッチを切られてしまったかのように。






「…おーい佐渡?お前大丈夫??なんか最近ぼーっとしてね?」





真島に声をかけられたことで、ようやく目の前にいたことに気づき意識を引き上げる。






「……なんだ真島か」





「壊れたレディオか」





「——————」






言うまでもなく眼力で圧を加えると、真島は見るからに慌てて話題を転換した。






「そ、そういえば佐渡さ、お前彼女いるんだっけ?」