「蒼人～！今日遊べる？」
「え？何言ってんの？俺たちこの夏受験勉強しなきゃなんだよ？」
「あーもう俺らそんな年だっけ？」
「まあお前の場合は精神年齢小学生かもだけど。」

セミの鳴き声がうるさい夏。
俺たち受験生の本番夏休みが明日から始まる。
俺たちは明日からの長期休み期間に、受験にむけて勉強をしなければならないのだ。
正確に言うと、しなければいけない。ではなくしなければ怒られる。と言った方が近いかもしれない。
大体この世の中、多様性だのなんだの言う割には結局学歴社会だ。
俺たちは高学歴でなきゃいい職につけないだなんて大人から言われる。
そう洗脳されてるのだろう。本当に馬鹿馬鹿しい話だ。

「蒼人！今日一緒に帰ろー。」
「うん。」
そんなことを考えていたら俺の友達の高倉恵斗が話しかけてくる。
俺たちは涼しい校舎から暑苦しい昇降口を出て、少しずつゆっくり歩き出す。

ミーンミーンミーン
そこらかしこでセミが鳴いている。もう夏だなんて思いながら足を右左に出していく。

「お！蒼人あそこ。セミが死んでる。」
「ん？本当だ可哀想に。」
「セミってせいぜい生きれて7日らしいよ。」
「え？そうなの？」
7日ー。週で数えれば一週間。
俺たちがゲームだのなんだのかんだのしてあっという間に流れていくあの一週間。
「可哀想に。」
俺はもう一回その言葉を発す。
「本当だよなー。」
恵斗もそれに頷く。
そして重い空気を変えるべく俺は新作のゲームの話をし始めた。