「助かる」そう思った矢先、「この役立たずがっ!」と声を上げる別の兵士にその首は一瞬にして切り落とされる。一呼吸の間もなく惨殺された身体に、彼女は悲鳴さえ上げることが出来なかった。
脆くも消え去る小さな希望。次にその者が狙うは自身の命だと、抗う術さえ持たぬまま身を強ばらせる。身構える暇もなくその腹部を貫いた剣は、一音も発することを許さぬよう彼女の細い身体を串刺しにした。
目が合った兵士の頬には、先程殺めた者の返り血がこびり付いている。その記憶だけを残し引き抜かれた刃に、自身の肝を引き裂かれる感覚と余韻だけが聴覚を刺激していた。
吹き荒ぶ極寒の嵐。森中を荒らす猛吹雪に耐えられなくなった兵士たちは、身を守るよう急ぎ去って行く。地に倒れながら目にしたものは、去り行く彼らの足跡と、首と胴体を切り離された哀れな兵士の亡骸だけ。
このまま死ぬのだという漠然とした思いがその心を支配して行く。上空から降り注ぐ白い結晶は、軽く氷点下をいくこの気温にどんどんと降り積もっていった。
真っ白な雪を溶かす赤い花。地を這うよう伸びゆく鮮血に、物言わぬ屍となった者の成れの果て。容赦なく降り積もる雪の粒は、もはや動くこともかなわなくなった彼女の身体をも、白銀の世界へと隠していく。
脆くも消え去る小さな希望。次にその者が狙うは自身の命だと、抗う術さえ持たぬまま身を強ばらせる。身構える暇もなくその腹部を貫いた剣は、一音も発することを許さぬよう彼女の細い身体を串刺しにした。
目が合った兵士の頬には、先程殺めた者の返り血がこびり付いている。その記憶だけを残し引き抜かれた刃に、自身の肝を引き裂かれる感覚と余韻だけが聴覚を刺激していた。
吹き荒ぶ極寒の嵐。森中を荒らす猛吹雪に耐えられなくなった兵士たちは、身を守るよう急ぎ去って行く。地に倒れながら目にしたものは、去り行く彼らの足跡と、首と胴体を切り離された哀れな兵士の亡骸だけ。
このまま死ぬのだという漠然とした思いがその心を支配して行く。上空から降り注ぐ白い結晶は、軽く氷点下をいくこの気温にどんどんと降り積もっていった。
真っ白な雪を溶かす赤い花。地を這うよう伸びゆく鮮血に、物言わぬ屍となった者の成れの果て。容赦なく降り積もる雪の粒は、もはや動くこともかなわなくなった彼女の身体をも、白銀の世界へと隠していく。