それから先のことを知る者は、もう誰もいない。

 真実も闇へと葬り去られた。

 しかし、その全てが消されたという訳ではなかったようだ。その一部は悲しい恋物語として、後世に伝えられている。

『Tagelied/ターゲリート』────それが歴史上の実話だと知るものはいない。

 今となっては、ただのおとぎ話だ。

 だから、その存在を誰ひとりとして信じていないのだろう。

 しかし────『彼』は確かにそこにいた。

 人間に気付かれることなく長い年月を孤独と共に歩み、途切れることなく訪れる暁を数えるだけの日々。

 この世にただ独りとり残された彼は、森の奥深くに聳え立つ白亜の古城に身を潜め、今も『永遠』を生き続けている。









 あなたは信じるだろうか? 「彼ら」の存在を。その中にある、溢れんばかりの慈しみの心を。

 どうか、知っていて欲しい。

「彼ら」の────いや、「彼」の生きた証を。

 この世でたった独りの、悲しくも美しいヴァンパイアの姿を────。