「何も分からなくて⋯⋯」そう目を伏せたまま語る彼女に、王はそうかと頷いただけだった。

 とにかく気苦労をかけたことを詫びれば、「親が娘の心配をするのは当たり前だろう」と彼女を抱きしめる。なぜだか分からないが、その間ずっと抱えた不安は消えないまま。

「何か思い出したことがあれば、この父に教えておくれ」

 国王の言葉にイザベラはただ、作り笑顔で頷いた。

 答えはきっと自分の中にある。それは明白だったが、それを突き詰めていくのが怖くて、その時ばかりは気づかないフリをした。

 正体の分からない、漠然とした不安を抱えたままで⋯⋯。