「⋯⋯四百年、か⋯⋯⋯⋯」
閉じられた表紙をじっと見つめ、リュディガーは感慨深く呟く。
短命な人間には果てしなくも感じる数百年の年月。その長きに渡り、歴代の王たちはあるものを必死に探し続けていた。そしてそれは未だ、見つかってはいない。
リーフェンシュタール家に伝わる『誓いの書』。そこにはヴァンパイア一族の秘密が記されてある────と言われている。
そして王族であるシュタインフェント家の繁栄と、その裏にある殺戮による歴史の真実も⋯⋯。
王の胸中には様々な思いが渦巻いていた。
深く息を吐き、視界に入る薔薇の紋章を見つめる。深紅の薔薇を美しいと愛でる心はあるが、家紋として象られたその花に敬意を表することなどできはしない。そう静かに目を背けたその時、窓の外、階下が何やら騒がしいことに気づく。何事かとその様子を伺おうとすれば、廊下から近づいてくる足音に意識を引かれた。聞こえた二回のノック音。ゆっくりと開かれた扉から現れたのは、側近の一人である宰相ギルベルト・アーレ。
国王のもとを訪れた彼が告げたのは、王にとって思いもよらぬ事柄だった。
閉じられた表紙をじっと見つめ、リュディガーは感慨深く呟く。
短命な人間には果てしなくも感じる数百年の年月。その長きに渡り、歴代の王たちはあるものを必死に探し続けていた。そしてそれは未だ、見つかってはいない。
リーフェンシュタール家に伝わる『誓いの書』。そこにはヴァンパイア一族の秘密が記されてある────と言われている。
そして王族であるシュタインフェント家の繁栄と、その裏にある殺戮による歴史の真実も⋯⋯。
王の胸中には様々な思いが渦巻いていた。
深く息を吐き、視界に入る薔薇の紋章を見つめる。深紅の薔薇を美しいと愛でる心はあるが、家紋として象られたその花に敬意を表することなどできはしない。そう静かに目を背けたその時、窓の外、階下が何やら騒がしいことに気づく。何事かとその様子を伺おうとすれば、廊下から近づいてくる足音に意識を引かれた。聞こえた二回のノック音。ゆっくりと開かれた扉から現れたのは、側近の一人である宰相ギルベルト・アーレ。
国王のもとを訪れた彼が告げたのは、王にとって思いもよらぬ事柄だった。