「それじゃあ、今の王は⋯⋯何者なんだ?」

「偽りの王。俺から言わせれば⋯⋯⋯⋯ただの殺人者だ」

 もしかして、と尋ねるヴィクトールに彼は頷いた。

「俺たち一族を皆殺しにし、全ての罪を我らに着せた。その殺戮者の黒幕が、ゲオルク・シュタインフェルト。今の国王の血筋だ」

 そしてその事実を知りながらも、自分は何一つ出来なかったと。

 それどころか彼は、その憎き血族の末裔であるイザベラの命をこの度救ったばかり。あの時、彼女を見殺しにすることも出来た。わざわざ手を差し伸べることもなかったはずだ。なのに、彼はそうはしなかった。

 見て見ぬふりなど出来なかったのだ。

 彼自身が背負う、救えなかった数多の魂と重なって。

 人ひとり捻り潰すことなど、彼には容易い。しかし、一族の掟がそれを許さなかったのだと。

 もう二度、人は殺さない────それが、ヴァンパイア一族の血の掟だったから。

 そして、それを確約に人間との共存を受け入れたのだ。

 けれど、彼らはヴァンパイア。

 どうあっても鮮血への欲求は抑えられない。血への渇きは彼らを瞬く間に『血に飢えた魔物』へと変貌させていく。

 そこで考え出されたのが、とある『秘薬』だった。