「確かに、死んだ者はもう還っては来ない。なら、その死にも意味があると思いたいんだ」

 そんな切なる思いが、クラウスの心を動かす。

 窓辺に歩み寄る彼は、ゆっくりとカーテンに手をかけると、それを豪快に開けた。

 外の景色は知らぬ間に朝を迎えようとしている。

「夜明けは嫌いだ⋯⋯」

 淡く色づく景色を眺めながら、クラウスは感慨深く呟いた。

 太陽の光が彼にとって命取りになることくらい、ヴィクトールだって知っている。しかしクラウスのその言葉には、また別の意味があるような気がしていた。

 夜の闇を押し退け、朝の日差しが森の木々を目覚めさせていく。昨夜、再び吹き荒れた猛吹雪が嘘のように、辺りは静けさに包まれていた。