「復讐など無意味だ。やめておけ」

「お前に僕の気持ちの何が分かるっていうんだ!?」

「分かるんだよ⋯⋯分かりすぎるほどだ。⋯⋯⋯⋯かつて俺も、同じ思いをしたから⋯⋯」

 低く呟くクラウスにヴィクトールは目を見開く。少し悲しみが入り交じっているようなその声色に、二人は静かに向き合っていた。

「俺もお前と同じだ。家族だけじゃない⋯⋯一族全員が皆殺しにされた。俺一人を残して。当時は復讐も考えたさ。しかしそんなことをしても、死んだ者たちはもう還っては来ない。────そうして四百年の時が過ぎた。あの時もし俺が復讐を果たせていたとしても、状況は何一つ変わらない。俺はずっと、孤独なままだ⋯⋯」

「四百年⋯⋯⋯⋯? 今まで⋯⋯たった独り⋯⋯」

 突然語られた彼の過去とその途方もない年月に、ヴィクトールは呆気にとられていた。

「惨たらしく殺されて逝った一族皆のことを思えば、たかが四百年⋯⋯⋯⋯」

「⋯⋯クラウス、復讐が何も生まないことは僕もよく分かってる。それでも、このままでは終われないんだ。例え自分の望む結果にならなかったとしても、理由くらいは知っておきたい。どうしても⋯⋯」

 でなければ、誰も浮かばれない。無残にもその命を絶たれた家族の死を、無駄なものにしたくないのだと。懇願する真摯な眼差しは意外にも情熱を宿しながら純粋にさに燃え、そんな彼をクラウスは何も言わずただ見つめていた。