項垂れるよう俯くヴィクトールに、しけたツラなど見たくないとクラウスは背を向ける。

「彼女なら夜明けと同時に出て行った。向こうもお前を避けているようだな」

「そうか」としか答えないヴィクトールは、自分を殺そうとした相手に会いたいヤツなんかいないよな、と自嘲気味に笑う。

「⋯⋯で、お前はいつまでここに居座る気だ? 長居はしないんじゃなかったのか?」

 さっさと出て行けとせっつくクラウスに、「僕は出て行かない!」と声を上げた。

「何だと?」

「僕はお前(・・)を捜してここまでやって来たんだ! 今ここから出て行くわけにはいかない!!」

 振り返ったクラウスを、強い意志を持った眼差しが見つめている。

「お前は、僕が何者か知っている。そうだろ? だったら教えてくれ、我が一族の過去に何があったのか。その出来事の詳細を。なぜ今になって僕たちの家族が、『シュタインフェルト』に皆殺しにされなければならなかったのか。お前なら、その答えを知ってるはずだ。⋯⋯だろ?」

「それを知ってどうする?」

 言う言葉はヴィクトールの心を鋭く射抜く。冷やかな眼差しが全てを見透かしているようだった。