「これはね、この国にとってとても大切で重要な歴史の本よ。ある女性からお母様が託されたの。これは私たちが王族であるという唯一の証。だから大切にしなければならないの」
ルーカスはその書物の表紙にそっと触れる。
この歴史書を『リーフェンシュタール家』に返すまでは、ヴェルナー一族の戦いは終わらないのだと。
「決してゲオルクに渡してはならない。誰の目にも触れない場所に隠して欲しい」────これを彼女に預けた女性、クリスティーナはそれだけを言い残し去って行ったのだ。
「いい? ルーカス、よく聞いて。この歴史書に記されてあるのは、これから先葬り去られるであろう歴史の真実と、リーフェンシュタール家にまつわるある大きな秘密について。もしそれが『何』を示すものなのか、それを知っているとシュタインフェルトの者に知られれば、私たちの命はないわ。いえ⋯⋯私たちだけではない。これから先多くの命が危険に晒されることになる。だからこの『誓いの書』は何がなんでも隠し通し、守り抜かなければならないの。そしてそれは、私たちの誇りを守るためでもある。いつか来る、その時のために⋯⋯」
「その時⋯⋯?」
「えぇ、これをリーフェンシュタール家に返すことができた時、全ては終わる⋯⋯」
まだまだ幼い我が子が、その話をどれだけ理解できたのか? それは母である彼女にも分からなかっただろう。けれど幼いなりにも力強い眼差しはコンスタンツェを見上げ、「はい!」としっかりとした響きをもって答えたのだ。
その眼差しはまるで国王の面影を見ているようで、我が子の成長だけが今の彼女には希望の光だった。
ルーカスはその書物の表紙にそっと触れる。
この歴史書を『リーフェンシュタール家』に返すまでは、ヴェルナー一族の戦いは終わらないのだと。
「決してゲオルクに渡してはならない。誰の目にも触れない場所に隠して欲しい」────これを彼女に預けた女性、クリスティーナはそれだけを言い残し去って行ったのだ。
「いい? ルーカス、よく聞いて。この歴史書に記されてあるのは、これから先葬り去られるであろう歴史の真実と、リーフェンシュタール家にまつわるある大きな秘密について。もしそれが『何』を示すものなのか、それを知っているとシュタインフェルトの者に知られれば、私たちの命はないわ。いえ⋯⋯私たちだけではない。これから先多くの命が危険に晒されることになる。だからこの『誓いの書』は何がなんでも隠し通し、守り抜かなければならないの。そしてそれは、私たちの誇りを守るためでもある。いつか来る、その時のために⋯⋯」
「その時⋯⋯?」
「えぇ、これをリーフェンシュタール家に返すことができた時、全ては終わる⋯⋯」
まだまだ幼い我が子が、その話をどれだけ理解できたのか? それは母である彼女にも分からなかっただろう。けれど幼いなりにも力強い眼差しはコンスタンツェを見上げ、「はい!」としっかりとした響きをもって答えたのだ。
その眼差しはまるで国王の面影を見ているようで、我が子の成長だけが今の彼女には希望の光だった。