「わ、私は⋯⋯アイゼンシュタットの王、リュディガーの娘。イザベラ・シュタインフェルト」

「シュタインフェルト⋯⋯────」

 その瞬間、ヴィクトールは目を見開き側に置いてあった自身の剣に手をかける。柄を握りしめ鞘から一気に引き抜くと、素早い動きでその尖端をイザベラに向けた。

 当然、彼女には意味が分からない。

 なぜ自分が殺意を向けられなければならないのか? その理由が。

「ヴィクトール⋯⋯?」

「お前がシュタインフェルトの血を継ぐ者だと知っていたなら、回復など待たずにそのまま殺していたのに!」

「けれど、あなたはずっと側で私を看ていてくれた。一体⋯⋯どうしたっていうの?」

「僕は、ヴィクトール・ヴェルナー。知らないとは言わせない!」

 薄闇の中、研ぎ澄まされた剣が鋭く光る。

「何のこと? 私があなたに何をしたと言うの?」

「何も知らないのか? 自分の父親の忌まわしき行いを!!」